わたしの仕事を見てる人 ※長編

ゴブサタしています。

公約通り先週内部の左官を終わらせたわたしは、

今週、外部にモルタルを左官しました。

足場の悪い二階部分や、練っても練っても終わらない

作業に少々気が滅入りつつの一週間。

木曜日のできごとです。

いつものように作業をしていると

ちゃりんこにまたがったじいちゃんが

5メートルくらい向こうからこっちを見ていました。

ものすごく。

おや?

と思いましたが当然スルー。

10分経過。

20分経過。

30分経過。

見すぎだろ。

と思いましたがもちろんスルー。

「テレビとかマンガではこういう変なじいさんが

実は馬主級の超大金持ちで、そんなへんてこじいさんに

親切に接した主人公がビッグチャンスをつかむ的な展開があるけど

このじいさんはただの銭湯帰りのおっさんだろう。」

なーんてしょうもないことを考えながら仕事。

結局1時間くらい見つめた後、じいちゃんは何も言わずに去ってゆきました。

オシャレなんだかボロいだけなんだかよくわからない折りたたみ自転車に乗って。

続いて小学校3年生くらいの女の子が中を見ていました。

「きれいになったなー」

と女の子がぽつり。

ずっと見てたの?と聞くと、

「解体が始まったときから見てた。

あー、やってんなーって思ってた。

ここおばあちゃんのお店だったの。

きれいになったなー。」

なんと以前の経営者のお孫さん。

ちょっと切ない気持ちになりながら、二階も見て来ていいよと言うと、

うれしそうにあがって行きました。

「すごくきれいになった。でもなにがどこにあったのかは全部わかるよ。」

そっか。あなたの大切な思い出の場所だね。

いい店にするよ。

と心に誓いながら、笑顔で「さよなら」という女の子に

大きな声で「さよなら」といいました。

一日モルタルを塗り続けて夜の9時。

時間も忘れてやっていたときでした。

「がんばってますねぇ」

ハッと振り返るとおじさまが立っていました。

スチャダラパーのboseに似ている。

わたしとしましてはわりとタイプな顔であります。面識はありました。

解体が始まったとき、ちょこっと立ち話をしたことがあるこのおじさま。

「あーお久しぶりです!」

「ひとりでやってるんですか?」

「そうなんです。もうとっくに納期過ぎちゃってるんですけどね」

と力なく笑うわたしの素人左官仕事を見つめながら、

「いや、そんなこと悔やむことはないですよ。

今こうして頑張ってることがすばらしい。

ほんとにすばらしい。」

照れる。

ほめられると照れる。

でへへとなる。

にやにやを押さえ、必死でまじめに集中している顔をつくる。

「涙が出るほどすばらしい。」

これには完全に顔緩みました。

しまった。にやけてしまった。

でも同時に驚きました。

衝撃的なことばでした。

「涙が出るほどすばらしい」

そんなことば今まで生きてきて言われたことない。

自分が仕事をしていてこんな言葉をかけてもらえるなんて。

「いい店になりますよ。絶対になる。

こんなに愛情がこもってるんだから。」

うれしくてこっちが涙出そうになりました。

わたしはしあわせです。

愛情、めいっぱいこめます。

いい加減なことできません。

こんなに見てくれている人がいるんだから。